胃がんリスクからみたヘリコバクターピロリ(HP)感染診断法
東京医科大学の河合隆教授の講演を拝聴した。2013年2月慢性胃炎に対するHP除菌の保険適応が認められてから、胃がんの発症が減少してきている。胃がんの原因としてLOHやMSIといった遺伝子異常、MNMGなどの発癌物質、ストレスや加齢などが研究されてきたが、やはりHP感染が最も重要な因子であり、胃がん全体からみるとHP陰性の胃がんの頻度はおよそ0.2%にすぎない。ただ気を付けなければならないのはHP除菌後の場合は胃がんのリスクが減るのであって定期検査は必要であること、形態変化が起こってわかりにくくなってしまうことである。
またHPの診断法として血清抗体法が有用で、Cut off値として10U/ml未満が陰性となっているが、3-10U/mlには既感染例が少なからず含まれており、実際には3U/ml未満が理想的とされている。ただ最近検査会社によってエンザイム法(EIA法)からラテックス法(LA法)への移行が行われている場合があり、後者は前者に比べて高値に出てしまう傾向がある。現在学会でも理想的なCut off値を検討中であるという。
当院でもHP除菌して8週後陰性であった症例が、1年後にHP抗体10U/ml以上に出てしまうことが数例でてきている。HP抗体の陰性化は、遅い人の場合3年くらいかかることもあるが、エンザイム法(EIA法)なのかラテックス法(LA法)なのかの確認が必要である。