第89回日本消化器内視鏡学会総会参加報告

ビデオシンポジウム 胃・十二指腸腫瘍に対するEMR/ESDの課題と将来展望

十二指腸は常に膵液・胆汁といった消化液にさらされており、内視鏡治療後の穿孔率が有意に高い場所である。しかも腫瘍径が10mmをこえると担癌率が30%を超えてくるため、内視鏡治療をする側としては最も難易度の高い部位であると考えられる。各施設の発表では、切除後できるだけクリップによる縫合を行い、それができないような大きな切除後潰瘍に対しては腹腔鏡下の潰瘍縫合術も示された。小山先生や矢作先生はこの部位の腫瘍に対しては、biopsyによる経過観察は切除困難にしてしまうためすべきでなく、3-5mmでも見つかればbiopsyではなくEMR+クリッピングをすべきであるという意見であった。その他、PGAシートによる被覆法+ENPD法、ツイングラスパーによる縫縮法、OTSC(over the scope clip)による縫縮法など興味深い報告が見られた。

 

シンポジウム H.pylori未感染および除菌後胃癌の診断治療における課題と対策

H.pylori除菌後に発生する胃癌の特徴として平均年齢が65歳前後とやや低いこと、陥凹性の病変が多いことが示された。また胃炎類似病変が約40%に見られ、これらの症例ではNBI観察でも血管変化が乏しく、表層が正常粘膜で覆われていることが多いという。一方H.pylori未感染胃に発生する胃癌の特徴としては非常に興味深いことが報告された。平均年齢が55歳前後とさらに若い上に、大きく3つのカテゴリーに分けられるという。一つは胃穹窿部(Cardia)に見られるSMT様の癌、もう一つは体上部から体中部(Body)に見られるLST様の癌、そしてもう一つは幽門部(Antrum)に見られる印環細胞癌である。日本ではH.pylori陽性者からは年間12万人の胃癌発生を認めるが、H.pylori未感染者からは年間1000人程度と約1/100の頻度であるという。これらの主にESD症例で得られた標本では増殖活性はあまり強くなく、上村先生はこの際見られる印環細胞型のm癌はESDでもいいのではないかというご意見であった。その他、食道胃接合部の胃癌は0-2時に方向に見られることや、H.pylori陰性でも幽門部にびらんに類似した分化型腺癌が見られるなど興味深い報告が見られた。