JDDW2015参加報告
-膵がん診断の進歩-
検診学会須山正文先生の会長講演を拝聴した。まず膵がんによる死亡率が肝臓がんを上回り、肺がん、胃がん、大腸がんに次いで第4位と徐々に増加傾向にあること、膵がんは初期で1cm以下であれば予後は良いが、初期であっても1cmを超えると進行がんと予後があまり変わらないことを示された。そして膵がんの初期症状として、腹痛、黄疸、下痢、背部痛、耐糖能異常などあげられるが、膵がんの発見症例の50-60%に耐糖能異常が認められるという。リスク因子としてはIPMN、糖尿病、多発性嚢胞があり、要点として微小膵がんの診断のためには、まずはエコー検査で拾い上げ、MRCPで膵管の異常があれば、ENPDによる数回の膵液採取、またHigh riskと考えられる患者さんに関しては連携施設での登録による経過観察が望ましいと締めくくられた。
-胃炎の京都分類を検証する-
胃炎に関するパネルディスカッションに参加した。京都分類では胃炎の所見を1.Atrophy、2.Intestinal metaplasia、3.Enlarged fold、4.Noudular gastritis、5.Diffuse redness に注目し、それぞれ0-2点にわけスコア化を試みている。その結果胃がんのリスクとしてAtrophy、Intestinal metaplasiaが抽出され、特に地図状発赤はH. pylori除菌後もリスクファクターとなるようである。毎日胃カメラをさせていただいている我々のような実地医家にとっては当たり前といえば当たり前であるが、内視鏡所見中心の京都分類は、組織所見中心のシドニー分類に較べればはるかに馴染みやすく有用である。ピロリ菌感染の有無を内視鏡で診断するには、未感染胃では胃角でのRACの存在が、現感染胃では体部でのDiffuse rednessが特徴的な所見である。またピロリ除菌後にはところどころにやや陥凹した斑状発赤が出現してくるが、病理学的には腸上皮化生であることが多い。ピロリ感染胃では腸上皮化生は白く観察されるのに、ピロリ除菌後には腸上皮化生が赤く観察されるのはどうしてであろうか。これからは除菌後の胃炎分類ということで、今一度改訂版もしくは何々分類が登場してくるのではないだろうか。
最後に京都分類を提唱された川崎医科大学の春間教授もおっしゃられたが、明日からの胃カメラ検査もこれらの知見をふまえながら、わくわくしながら観察させていただきたいものである。